虚子探訪(170) 春潮

【虚子探訪(170)】

 

「春潮といへば必ず門司を思ふ」

 

昭和5年3月。春潮は必ず、荒々しい門司の海を思い出すのである。虚子には、忘れられない風景を見たのであろう。「門司を思ふ」と字余りの強い断定。

 

「ふるひ居る小さき蜘蛛や立葵

 

昭和5年6月27日。鎌倉俳句会。鴻乙居。夜、正福寺谷戸蛍狩。

立葵に小さな蜘蛛がその身体を震わせてとまっている。微細な観察の句。