清水凡亭『ネクタイ』

夜中に目が覚め、寝られなくなり昔買った清水凡亭句集を読みだす。

清水凡亭は「平凡」「平凡パンチ」等を手掛けた編集者の清水達夫の俳号。満八十歳の時に出した第二句集が『ネクタイ』。この句集校正中に清水達夫は亡くなり遺句集となった。ふらんす堂の文庫句集と全く同じ装丁でお洒落。生涯にふらんす堂でこんな句集が出せたら本望ですね。

 

朝寒やネクタイは黄の手編み選る

 

句集より一句。

向日葵

隣家の畑に植えられている向日葵は、背丈が2メートル近くある。畑は道路より上にあるので、向日葵に見下ろされる感じ。威風堂々真直ぐにたつ向日葵は、まさに夏そのもの。夜中激しい雨であったが、朝方にはあがっていた。今日も暑くなりそう。

 

向日葵へ光集ひし葉に花に

光彩抄・転載

『南風』8月号の「光彩抄」の転載です。3か月連続で前田照子さんのコメントをいただきました。「光彩抄」は津田恵理子選の「南風集」のうち3句蘭の句にコメントしたもの。

 

後ろより人現れぬ梅真白

 

意表をついた状況を捉えておもしろい。しかし、「梅真白」で受けきれるかという点が心配。

なるほどと思いました。「南風」もメ-ル句会がはじまる。参加しようかな。

 

東京オリンピック

東京オリンピックまで、あと3年になったとTVが報道している。2020年は、あっという間にやってくるのだろう。

1964年の東京オリンピックの記憶はおぼろげでしかも断片的である。当時6歳だから、しかたがないか。裸足の王者アベベのマラソン、重量挙げの三宅義信、東洋の魔女と呼ばれた女子バレー、遥か昔の記憶。

 

神田川祭りの中をながれけり

 

久保田万太郎の句。

 

海鼠腸

海鼠腸が好きで勝気で病身で

 

森田愛子の句である。森田愛子は、昭和22年に29歳で亡くなる。高浜虚子がかわいがった秘蔵の弟子で、小説「虹」の主人公。信州小諸にいた虚子と、越前三国にいた愛子の虹の句のやり取りはあまりに有名。

海鼠腸(このわた)が好きというのが意外だが、森田愛子という人がこの一句に鮮やかに表現されている。

 

そういえば、虚子の『虹』を古書店で見つけて買ったはず。探して愛子に会いに行くとしよう。

 

空蝉

蝉の幼虫が地上に這い出てきて、背中を割り川を脱ぎ捨て成虫になる。この蝉の抜け殻が「空蝉」と呼ばれる。成虫になるのは夜中に行われるが、夜明け前の深夜蝉の鳴く声がすごいのは、一人前になったという歓喜の歌を蝉たちが歌うためかもしれない。

 

空蝉や未来へ躍り出てゆきし

桃をもらって、冷蔵庫に入れたままになっている。水分のたっぷりとした甘い桃を食べるのは至福の時であるが、皮をむいて上手く食べるのが難しい。誰かが向いて、もう食べるだけにして有ればいいのだが。

西東三鬼の句集『夜の桃』を所有しているのが密かな自慢。

 

中年や遠くみのれる夜の桃

 

西東三鬼の句。