老醜

その老人はシート席で文庫本を読んでいた。よれよれの汚いコートの下は背広姿だったので、サラリーマンなのだろう。年齢は60歳すぎ。老人は、喉に違和感があるのか、絶えずウエッと音をたてている。足を組んでずり下がった靴下と、痩せた生足を見せている。最悪なのは鼻水をすでにかんだティッシュをとりだし、ぬぐっている。老人には他人のことなど関係ないのだろうが、周囲の者は不快感でたまらくなる。老醜という言葉を実感した。


寒風と魚のやうにすれちがふ

大木あまりの句。

おしくらまんじゅう

おしくらまんじゅうは、冬にする子供の遊び。「おしくらまんじゅう 押されて泣くな」のフレーズは誰もが知っている。大人になればもうしないかといえば、毎朝の通勤の地下鉄車両に乗る時は、おしくらまんじゅう状態。楽しくないのが欠点。


おしくらまんじゅう背中押すもの押し返す

サロンパス

会社のシステムを新システムに移行中。初期設定では大量のデータの移し変えが必要となる。データの一括処理できないもの手作業となり、ひたすら入力するしかない。両肩から首筋にかけて、どんどん固まっていくのがわかる。期限があるので中止はできない。帰宅して、入浴後サロンパスを貼る。よく効くのでありがたい。


毛布かけ両の肩にはサロンパス

区長選出

昨日は区の常会。次年度の区長選出で紛糾する。無報酬で時間をとられる区長など、誰もがやりたくないので決まらない。押し付けあい、エゴイズムがみだれとぶ。とりあえず受け手が現れ、今後の区長選出ルールも決めて解散。やれやれ。


冬ざれや卵の中の薄あかり


秋山卓三の句。

草紅葉

工場跡地なので家の敷地はひろい。利用しきれないので、一面草だらけとなっている。春、夏は成長する草との戦いである。今日あたりは、枯れきるまえに、赤くなった草原が広がり、これが「草紅葉」というものかと思う。草紅葉は秋の季語だが、今ぐらいが旬の時期。


雨濡らす身を横たへて草紅葉

断捨離

昨日は、部屋の整理で不要な本やマンガを処分、BOOK・OFFに60冊ほど持ち込む。本を買っても積ん読になりがち、片付けていると、こんな本を買ったのかという本が出てくる。引き出しの書類整理も一緒で、捨てきれず入れたままのものが多い。写真とか手紙は思い出がらみのものは、すてられない
思い切り捨てていかねば、何時までも片付かない。


棚吊ればすぐ物が載り十二月

岡本差知子の句。

一物仕立て

『平成秀句選集』(平成19年)を手に入れて、頁をめくると巻頭随想で片山由美子が「「取り合わせ」か「一物仕立て」か」のタイトルで、会員である『南風』の津田恵理子主宰を一物派の有力作家登場と言って紹介していた。第一句集『和音』は本当に一物仕立てのいい句が並んでいる。片山の言うように、一物仕立ては季語が主題となるため類想に陥りやすい。句を成功させるためには、「取り合わせ」以上に発想の飛躍が要求されるが、そこが面白いのである。未知の扉を開けにいきたい。

 

たくさんの吾が生まるるしやぼん玉

 

津田絵理子主宰の句。