小川軽舟「死ぬときは」

小川軽舟、現役で活躍する男性俳人の中堅。
「鷹」主宰。1961年生。

句集『呼鈴』より

「鳥公(さか)るあをぞら神の見えざる手」

神の見えざる手は、アダム・スミスの経済学の思想だが、あまり深読みの必要はないと思う。青空を飛ぶ鳥たちの姿を見て、生命活動の不思議さに神の恩寵を感じた。神の文字から、見えざる手という言葉が連想として浮かび「神の見えざる手」として、とりあわせたのではなかろうか。

同じく『呼鈴』には、小川軽舟の代表句になるであろう

「死ぬときは箸置くやうに桃の花」

の句がある。桃の花との取り合わせの句だが、「箸置くやうに」が何とも言えずよい。このフレーズは普通出て来ない。言葉が突然降臨したんだろうな。小川軽舟は時折びっくりするような句を作る。