月天心

【自解・萩原68】

「唸り声無月の庭に猫が寄る」

夜の庭で猫の唸り声がする。何を揉めているのか。

「ペケポンが父の口癖夜の秋」

ペケポンのペケは×のこと。ポンは放り投げる擬音。製陶業を営んでいた父の不良品を仕訳る時の口癖。

「生身魂いつしか前に押し出され」

生身魂は「いきみたま」と読み秋の季語。歳をとれば知らぬ間に年長者として前に押し出される。

月天心沈黙の無き街の上」

蕪村の「月天心貧しき町を通りけり」を意識して作った。喧騒のとぎれぬ街を見下ろす沈黙の月。

「退職の書類書き終え秋の暮」

2013年9月18日、株式会社十六銀行退職。