虚子探訪(111) 蚊帳

【虚子探訪(111)】

 

「晩涼に池の萍(うきくさ)皆動く」

 

大正15年。晩方となり気温もようやく下がり、池の萍も動き出したよ。それにしても暑い日だったなあ。

「晩涼」は夏の季語。暑さのなかに感じる涼しさ。

 

「蚊の入りし声一筋や蚊帳の中」

 

大正13年6月。蚊帳の中に蚊が一匹入ってきて、ぷーんと音をたてて飛んでいく。蚊帳を使う家は今あるのだろうか。昔の生活のなかでは、蚊と蠅対策は夏の重要事項であった。