春日(下)

角川俳句賞の応募作、「春日」残りの25句です。

 

蒲公英に包囲されたる一軒家

廃屋のこんなところに黄水仙

葱坊主帽子が欲しくなる日あり

風そよぐアスパラガスの緑苗

若緑天を仰ぎて立ちにけり

蓮華草境界線の見当たらず 

紙風船高く上がらず落ちてくる

花虻の翅の唸りて忙しや

蛙鳴く背中打ちたる雨滴

菜種梅雨曇硝子の拭き掃除

震度三揺さぶられても春の夜

地下茎をはりめぐらして杉菜かな

絡み合ひ枝垂るるがまま山の藤

空回り難儀さうなる風車

筍の処分対象背の高き

尾をたらし鯉幟にも昼休み

新緑や切る髪さらに白くなる

青葉山鼓腹撃壌阿智の村

花桃桃源郷を小分け鉢

ぶらんこを加速する時膝曲げる

大口を開けて肉厚浅蜊

田楽に濃き味噌つけて串刺して

子が帰り八十八夜の老夫婦

洗車する水の滴り薄暑光

山を背に屏風開きて夏に入る