2017角川俳句賞(上)


第63回角川俳句賞は、月野ぽぽな氏の「人のかたち」が受賞。
「遅日」の題で応募した私の作品を2回に分けて掲載します。

 

冬風に吹き寄せられて鳥の羽根
黙々と形無くなり恵方巻
大寒やトムヤンクンを吹きさます
銀盤に曲線残るスケーター
冬の闇二回三回廻し蹴り
白マスク順番を待ち物言はず
組む足の宙に泳ぎし冬電車
霾るやグラフ波打つ心電図
春隣綾取りせがむ児の両手
白梅や全枝空へと開放す
洗面台縁まで満たす春の水
菜の花や満開となる蝶となる
白狐見たかもしれず春の宵
城ゆれる水面を分けて花見舟
花を背に高々上げし自撮り棒
ギターケースへ硬貨数枚花少し
一滴したたり落ちぬ猫柳
チューリップ奥の奥まで見せている
背の固きソファーに凭れ春の昼
突然に始まつている亀鳴くや
春驟雨ビニール傘なれば盗りしか
細枝のしなるその先雪柳
石楠花や花の芽すでに尖りたる
躑躅足音たてて雉一羽
紙風船落ちれば地面転がりぬ