七里の渡し

海くれて鴨のこゑほのかに白し

 

結婚式に出るため帰省した長女が、お昼を蓬莱軒で一緒に食べようというので家内と3人で出かける。10時30分から予約受付だが既に人の列。待ち時間を利用して、七里の渡し公園を見に行く。東海道で熱田と桑名の間は海上を行き来しており、その距離が七里であったことから七里の渡しとよばれ、交通の拠点として宿は大いに賑わったという。

芭蕉が『野ざらし紀行』で熱田で詠んだのが上記の句。現代俳句といってもいいくらい斬新で透明な抒情があふれる。私たちの見た海には、静かな海面に鴨が数羽ただよい、白い鷗が飛んでいた。鳩も群をつくり波止場にたたずんでいた。昼間の人影少ない港の風景は物寂しい。芭蕉が見た、夕暮れの海はまたさらに寂寥感があったと思うが、その光景を聴覚を視覚に転じて切り取り句を成立させた。見事というしかない。