水仙花
【自解・萩原37】
「水仙花はいと応えずわかつたわ」
言っても動かない娘、同じ事を繰り返し言う母親。「はい」と素直に返事をせず「わかったわ」と回答する。うるさいなあの気分ありあり、困ったもんだ。
「啓蟄や一人喋りの痴れ男」
「啓蟄や口開け婆の凭れくる」
「啓蟄や汚れ着の人羽化登仙」
春のとある日の帰りの電車。向き合った四人掛シート席、対面の席に座った若い男か何か喋っている。意味不明の一人喋りが延々と続く。隣に座った婆さんは、口をぽっかりと開けて眠りこけ、こちらへ凭れてくる。一人喋りの若者が降車すると、替わりに席に座ったのは、汚れたボロ服を着た中年、やおら缶ビールを開け、一人宴会が始まった。たまらんなぁ。
「清明の空一陣の風ゆけり」
突然に上司が退職表明。後は任せたと、風と共に去って行った。