徒然(下)

『徒然』残りの25句です。

雪合戦混戦したる放物線
寒日和坊主頭の手術跡
足腰にカイロを入れて春立ちぬ
霞立ち天のぼりゆく春の水
名古屋まで北海道展は春下る
腕まくりラーメン食べる春着の娘
黄水仙色鮮やかに独りなり
春の山頂に城さらに天
駅渡るむこうに臥龍桜かな
花びらの飛距離を競い春の風
落椿道敷き詰めて容無し
飛び出せず川に一列鯉のぼり
髪染めし無敵の娘風光る
走り梅雨コンビニの傘よく売れる
玄関に残されている蛇の衣
苺の実ぐるりと種の取り巻ける
蛞蝓誉められる事なかりけり
破れ網じっとしたまま蜘蛛がいる
クレーン車の並び指したる夏の空
太陽の光を浴びて裸なり
街宣車角を曲がりし大暑かな
背泳ぎすなすにまかせぬ大金魚
寝転んで水平線のボートかな
知らぬ人通りて行きぬ夕端居
十薬の白きをあとに蔭を出る


第60回角川俳句賞は、柘植史子「エンドロール」が受賞。選考委員は、池田澄子、高野ムツオ、正木ゆう子、小澤實の4人。