桃の花

細見綾子は、昭和13年に第一句集『桃は八重』を上梓。タイトルにするほど桃の花は好きだったのだろう。晩春、桃は葉の出ない前に愛らしい淡黄色の五弁花を花開く。句集には桃の花の句が5句収録されている。その中で私が一番好きな句が次の句である。

 

ふだん着でふだんの心桃の花

 

桃は「百(もも)」につながり豊穣のイメージ。桃は女性の花の印象が強い。確かな日常が「ふだん」の言葉を重ねて示される。なんとも温かく幸せな気分、そして秘められた決意。いい句だなあ。