『歩くひと』

クーラーの設置工事のために本棚を動かしていたら、谷口ジローの『歩くひと』が出てきた。私の所有しているのは文庫版。1990年から1991年の作品。40代くらいの夫婦が引越してきて、元の家主がおいていった老犬と町を散歩して歩く。台詞は少なくありふれた風景が展開し、ストーリーらしいストーリーもなく穏やかに時間がながれていく。読んでいるうちに、寡黙な中にあふれる詩情に心が奪われていた。散歩でもしようかと思う。そういえば、愛犬が死んでから散歩をしなくなったことに気づく。

 

つく息にわづかに遅れ滴れり

 

後藤夜半の句。