句集『稲津』(7)数の子

【句集『稲津』(7)】

あれあれと指示代名詞年の暮


物の形は思い浮かぶのに肝心の名前が思い出せないことが、歳を重ねるごとに増えていく。「あれ」とか「あれ、あれ」とか指示代名詞を言われても、本人でない以上他人にそれが何かわかるはずもない。そんなことを繰り返し一年が過ぎていく。


数の子や噛みしめるもの多かりし


おせち料理に欠かせないのが数の子数の子の粒の多さが子孫繁栄を連想させる事から、縁起物として用いられ、正月には欠かせないアイテムとなっている。コリコリした食感がたまらないが、こうしたよく噛んで食べるものは数の子に限らない。噛みしめるほどに味わいは深くなる。