全句批評の試み

『俳句』5月号の書評欄で、中岡毅雄が加藤哲也『女性俳句の覚醒ー櫂未知子試論ー』の全句批評について論じている。櫂未知子は好きな俳人なので、本書を早速購入した。句集一冊の全句批評は、よく見かける。一作家の既存句集の全句批評というのは見たことがない。対象となる句数が膨大になり批評内容が散漫になる。中岡毅雄も書いているように全句が秀逸句ではない。作者しか分からぬ意味不明の句が紛れ込むし、何割かは読み手にとってつまらない句である。それを、わからない、つまらないと記すことは、作者を正しく評価することにつながらないだろう。全句批評しようと一人の人間に思わせる櫂未知子は大したものだと思う。余談だが、加藤哲也は最近精力的に批評本を毎年数冊ベースで出しているが、どうしたんだろう。