2014角川俳句賞落選展を読む(上)

「角川俳句賞」の締切5月31日が迫っている。今年は、まだ何も準備できないままだ。

2014年12月21日に週刊俳句ウイークリーの「2014角川俳句賞落選展を読む  2.何を書きたいか」で、依光陽子が私の俳句を批評してくれているので、2回に分けて掲載します。

依光陽子は、昭和39年生れ、千葉県出身。平成10年に第44回角川俳句賞を受賞した。

 

抽斗に冬の日を入れてしまつた 

この作者も新旧かな遣いの混同をどちらかに統一してもらいたいと切に願うところだが、そのままの表記で引く。

永田耕衣の句に「抽出に佛光りし雪降るか」がある。耕衣の句は抽出(原句そのままの表記)の中に小さな仏像あるいは仏画を入れていたのだろう。抽出を引いたときその佛が光り、空の彼方から落ちて来る雪の気配を瞬時感じたという句。

掲句はもともと引いてあった抽斗を閉めるときに中の何かに映っていた冬日もろとも閉めた、ということか。或いは、冬の日を冬の一日と捉えると心象的な句になる。「しまつた」に僅かだが失敗の心理が含まれているからか、「日」が何か実体を持ってくる。前者の解釈であれば、抽斗を閉めた後の、暮れ落ちた部屋の暗さ、静けさが伝わってくるし、後者の解釈であれば、何か見られたくない自分、思い出したくない出来事、と少しネガティブな思いが「冬」から感じ取ることができる。案外この「冬」は取り替えの効かない詩語となっている。