後藤比奈夫『あんこーる』

後藤比奈夫の第15句集『あんこーる』が発売。100歳で詠む俳句は、いかなるものかと読み進める。比奈夫の俳句はいつもの比奈夫の俳句である。

夜中に考えたことは、結局俳句とは命あるものの発語なのだと思う。この世にあることから生じる、生命の呟きであり吐息なのだ。そのままでは取り出せないので、十七音の言葉に紡がれる。其処に技があり芸もある。俳句は常にそれぞれの人生を生きる庶民の文芸としてある。

 

手を握り笑つて露の訣れとは

下されし一人静が淋し過ぎ

ばらは薔薇ザインゾルレン何れでも

 

句集より3句。