『能村登四郎の百句』

ずいぶん前に予約した『能村登四郎の百句』(ふらんす堂)が届き読み始める。著者は、息子の能村研三。親子がともに俳人で、親の俳句を選び解説するのは、本シリーズでも後藤夜半を後藤比奈夫、角川源義角川春樹がある。親子だからこその話が読めて楽しい。膨大な数の俳句から百句選び出すのは大変だろうが、順に読んでいくと能村登四郎その人が立ち上がってくる。会ったことも無い人の息づかいが聞こえてくるようだ。子供を2人亡くし、教師として奉職し、俳句に情熱を注いだ明治の硬骨漢がいる。石田波郷が結社誌を持てと勧めてくれてよかった。能村登四郎の『沖』は多くの俳人を育てた。俳句界を牽引していく才能と見た波郷の慧眼に感服する。


月明に我立つ他は箒草


平成12年『羽化』所収の句。