虚子探訪(42) 灯取虫

【 虚子探訪(42)】

 

「上人の俳諧の灯や灯取虫」

 

明治39年6月19日。碧梧桐送別句会。星ケ丘茶寮。

寺の上人の庫裏の部屋には灯が点り、静かな夜を句作をして過ごされている。その揺れる灯に灯取り虫が寄ってきた。上人は東本願寺法王の大谷句仏のことで、碧梧桐の全国行脚のスポンサーだったといわれる。

 

「稚児の手の墨ぞ涼しき松の寺」

 

明治39年6月25日。「稚児」は寺院に召使われている少年。「松の寺」は、老松に取り囲まれているとか、庭に松の大樹があるような寺。松が立派な寺を訪れたところ、そこにいた稚児の手に墨がついていた。その様子がとても愛くるしく涼しげであったというのである。