虚子探訪(73) 余寒
【虚子探訪(73)】
「鎌倉を驚かしたる余寒あり」
大正3年2月1日。虚子庵例会。虚子は自句自解で『鎌倉といふところは、寒さが強くない所だと考へてをつたが、春になつて、もう大分暖かになつた時分だのに不意に又寒さが襲つて来た。鎌倉に住んで居る人を驚かしたのでありはするが、それを「鎌倉を驚かし」といつたところが俳諧的である。』と書いている。
「春雨やすこしもえたる手提灯」
大正3年3月。第三日曜。発行所例会。春雨が降り出した。手提灯は少し燃え出したところ、この火を消さんとする春雨であることよ。
「我心或時軽し罌粟の花」
大正3年5月3日。虚子庵例会。問題が解決したのか、ストレスが消滅したのか、心が軽くなった躍動感あるいは開放感と罌粟の花の取り合わせ。