虚子探訪(79) 水温む

【虚子探訪(79)】

 

「これよりは恋や事業や水温む」

 

大正5年2月11日。高商俳句会。山王境内楠本亭。高商卒業生諸君を送る。卒業生へのお祝いの俳句。卒業後は、恋に事業に頑張れと呼びかけている。「水温む」の季語が、暖かな感じを漂わせる。

 

「麦笛や四十の恋の合図吹く」

 

麦笛を鳴らすのが、四十の恋の合図だって。四十の恋は、そんなにも詩的かなあ。まあフィクションの俳句なんだろう。

 

「恋はものの男甚平(じんべい)女紺しぼり」

 

大正5年6月11日。発行所例会。恋する男の衣装は甚平で、女の衣装は紺しぼりであるというのだが。これは虚子の好みなのか?