虚子探訪(210) 広野

【虚子探訪(210)】

 

「虹立ちて雨逃げて行く広野かな」

 

昭和8年5月25日。丸之内倶楽部俳句会。

広い野原に激しく雨が降っていたが、やがてそれも遠のき、日が差してきて美しい虹がかかった。

「雨逃げて行く」と擬人化して詠む。虚子は「虹」を詠むのが好きである。

 

「囀や絶えず二三羽こぼれ飛び」

 

昭和8年6月13日。北海道旭川俳句大会兼題。

一本の大樹に、囀りはやまず、常にその木に二三羽の鳥が出たり入ったりしている。豊かな大樹の生命力と包容力、そして子鳥たちの躍動感が感じられる句である。