句集『稲津』(8)年用意

【句集『稲津』(8)】

 

黄ばみたる障子もかへむ年用意

 

年末には家中の大掃除をする。一年の埃を取り除いて、気持ちよく新年を迎えたい。きっかけがないと家の掃除や片づけはなかなかできない。いつかやろうと思いながら、気づいたら12月というのがパターン。障子も今は和室の一部にしかないが、日焼けして黄ばんでしまっている。これも貼り替えなければ。

 

空ビルの落書き消えず越年す

 

街を歩けば、空ビルや閉店した店舗にスプレーで書かれた落書きがいたるところで見られる。人気のない建物にしか落書きしないのは、犯罪行為になることを知っているからだろう。一旦書かれた落書きは消されることも無く褪色した無惨な姿をさらし続ける。