俳句四季の1月号で坂口昌弘が「忘れ得ぬ俳人と秀句」で村越化石を取り上げている。村越化石はハンセン病に罹り少年時代に家族と隔離されて施設に入所38歳の頃に片目が見えなくなり、48歳に全盲となって、91歳で亡くなった。全盲という世界がどんなものなのか想像もつかないが、村越化石の残した俳句を読むと澄んだしみじみとしたものが全身を通過していく感懐がある。化石の境涯は苛烈なものだったが、俳句は生命を見つめた静かな世界がひろがる。
蓑虫や天の静かさ糸に吊り
生きてゐることに合掌柏餅
あるがままありて涼しき自然石