虚子探訪(23) 花衣

【 虚子探訪(23) 】

 

「花衣脱ぎもかへずに芝居かな」

 

明治36年。「花衣」は花見に着ていく着物のこと。花見に行き、着替えることなく芝居に出かけた。忙しいことです。ひょっとしたら、お気に入りの着物だったのかもしれない。花咲く春の浮き浮きした女性の姿が浮かぶようである。

 

「老いぼれて人の後(しり)へに施米かな」

 

明治36年5月25日。虚子庵例会。会者、碧梧桐、癖三酔、碧堂、左衛門、酔仏、一転等。

「施米」は困窮者や僧に米を施し与えること。老いぼれた老人が、人の後ろについて米をもらうためにならぶ。老境無残、哀れな光景を描写する。