虚子探訪(45) 桐一葉

【 虚子探訪(45)】

 

「桐一葉日当りながら落ちにけり」

 

「桐一葉」は秋の季語。『淮南子』の「梧桐一葉落ちて天下の秋を知る」に由来する。初秋に桐の大きな葉がゆっくりと落ちて、秋の到来を感じるのである。この句の眼目は「日当りながら」の中7につきる。ゆっくりと経過していく時間のなかにある、存在あるいは世界と呼ぶものを、しみじみと味わう句。句は単純にして平明、しかし珠玉の一句。

 

「僧遠く一葉しにけり甃(いしだたみ)」

 

「一葉」は桐一葉の略で季語。僧が遠くへ去り、桐の一葉が石畳の上に落ちた。事象の推移に従い、初秋の清涼感を叙した句。「僧」を登場させたから「し(死)にけり」の語を使ったのだろうが、虚子独特の突き放した見方を感じる。

 

明治39年8月27日。