虚子探訪(63) 一つ根

【虚子探訪(63)】

 

「この後の古墳の月日椿かな」

 

何百年の歴史を経た古墳を眼前にして、この後に続いていく月日を思う。悠久の時間の流れを作者は感じているのである。古墳には椿の花が美しく咲いているのだろう。

 

「一つ根に離れ浮く葉や春の水」

 

大正2年。春。虚子庵句会。春の水に離れて浮いている葉は、よく見れば同じ根から出ていることを発見したのである。静かな時間がながれ、「春の水」が暖かな感じをただよわせている。Ha音の繰り返しが心地よく響く。この句は新傾向俳句に対して伝統俳句をある一面から実践したものとして意義深い句であり、虚子も俳話で詳細な説明をしている。