虚子探訪(219) 田舎源氏

【虚子探訪(219)】

 

「焼芋がこぼれて田舎源氏かな」

 

昭和8年12月10日。笹鳴会。丸ビル集会室。

喜寿艶』の自解。「炬燵の上で田舎源氏を開きながら焼藷を食べてゐる女。光氏とか紫とかの極彩色の絵の上にこぼれた焼藷」。

 

「白雲と冬木と終(つい)にかかはらず」

 

昭和8年12月15日。家庭俳句会。渋谷、あふひ邸。

一本の大樹の下、悠然と空を見上げる虚子がいる。冬木の枝の向こうには流れる雲。最初は枯れ木の中にいた雲も、ふと気がつけばいなくなっていた。