虚子探訪(238) 水馬

【虚子探訪(238)】

 

「魚鼈(ぎよべつ)居る水を踏まへて水馬(みずすまし)」

 

昭和10年7月11日。七宝会。井ノ頭公園茶店。

池の湖面にミズスマシがいる。その足が踏んでいる水の下には、もっと大きな魚や亀がいる。小さなミズスマシが偉そうに見えるなあと思ったのである。

 

 

「山の蝶飛んで乾くや宿浴衣」

 

昭和10年8月5日。箱根、松坂屋。一行13人。

旅館の浴衣が干してあり、そこにとまっていた蝶が飛び立った。ああ、これで浴衣が乾くねと大げさに言ってみた。山の蝶に旅情を感じたのである。