あっぱれ晶子

その子二十櫛に流るる黒髪のおごりの春のうつくしきかな


与謝野晶子『みだれ髪』のあまりにも有名な一首。晶子が故郷堺を捨て、与謝野鉄幹のもとへ走った直後の歌。晶子の高揚感が溢れた青春の歌である。黒髪がズームアップされ、「おごりの春」と強い断定、そして「うつくしきかな」の自己陶酔。たたみかけるように読ませるリズムの疾走感が素晴らしい。


鎌倉や御仏なれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな


この歌の「美男」の表現に、失礼不遜として批判が湧き起こったが、美しいものを美しいといって何が悪いとする晶子の姿勢は一貫している。私はこう感じたのだと高らかに歌い上げる晶子は、あっぱれと言いたい。