うつ病九段

先崎学の『うつ病九段』(文春文庫)を読む。棋士である仙崎学九段の1年間のうつ病闘病記。うつ病というものがあることは知っていても、どういう病気なのかは知らなかった。うつ病とは心の病と思っていたが、脳の病気と認識を改める。見た目からは分からないが、すさまじい病気なのだ。著者の兄が精神科医で的確なサポートがあったとはいえ、病気を治すのはあくまでも自分なのである。復帰を果たした著者の将棋にかける執念がひしひしと伝わってくる。それにしても、日記をつけない人が、自分のこととはいえ、ここまで詳細に病気を記録できるのか。物書きの冷めた目と、対象を追いかける執念で、グイグイと読ませる。

 

夕凪やなにもできない人となる