句集『稲津』(4)だるまさんがころんだ

【句集『稲津』(4)】

 

だるまさんがころんだ振り向けば冬

 

「だるまさんがころんだ」は子供の遊び。鬼が「だるまさんがころんだ」といって振り向き、鬼の方へ前進してくる動いた子供をあてる。『俳句』に投句してはじめて秀逸に選者・小島健、佳作に選者・小笠原和男でとられた。全体で十七文字の六四七の破調の句。友岡子郷の「跳び箱の突き手一瞬冬が来る」のような、あざやかな場面転換の句を詠みたかった。


寒昴次々人の替りたる

 

 昔、銀行にいた。銀行というところは、防犯対策もあり人事異動が頻繁に実施される。私が銀行で一番いいと思ったのは、人事異動で人が変わることにより環境が固定されないこと。嫌いな人がいても相手か自分かが暫くすればいなくなる。ただ反対に、素晴らしい人や環境も永続しない。人事異動の報道に知り合いの名前を見て詠んだ句。