句集『稲津』(3)栗きんとん

【句集『稲津』(3)】

 

座布団に乗りて蟷螂席をとる

 

去来の墓を見て道を歩いていくと、お茶屋さんの座布団の敷かれた縁台があり、そこに小さなカマキリが一匹乗っているのを発見。まるで、ここは俺が先に座ったんだからよろしくと、席取りをしているようだ。どうぞどうぞ、ゆっくり休んでいきましょう。

 

ほろほろと栗金団の崩れけり

 

秋の菓子である栗きんとんは、岐阜県の中濃・東濃地域の名産品で、沢山の店がある。店で買う栗きんとんもいいが、私は毎年自分で作るのが好きだ。作り方はいたって簡単。茹でた栗から皮を取り除いた実を潰して、サランラップか布で好きな大きさに茶巾絞りをすれば、はい出来上がり。栗自体の甘味だけでも十分堪能できます。栗きんとんが、ホロリと割れて、少し形が崩れる様子を句にしたもの。『俳句』に選者伊藤敬子で佳作入選した。