「生き様」という言葉

雑誌『俳句』の4月号の予告を見ると、特集で「境涯俳句―俳句は生き様」とある。いつの間にか「生き様」という言葉が頻繁に使われるようになった。使用者は「生き様=生き方」の感覚なのだろうが、私はこの言葉が嫌いである。「生き様」の「様(ざま)」には否定的な意味があり、他人の生き方や人生を「生き様」と書くのは失礼で不遜だと思う。敬意が無く、むしろ貶めている。「生き様」という言葉は、元々あった「死に様」という言葉と対を成す意味合いで発生したといわれている。死に様という言葉に穏やかな最期を想像することはない。「無様(ぶざま)な人生」「ざまあみろ」など、「ざま」がつく言葉にはすべてネガティブなイメージが伴う。
「生き様」などと言わなくても、「人生」「生涯」で十分である。


白鳥の帰ると決めし朝の声


高田正子の句。