有名になるということ

藤井聡太王将戦渡辺明名人を破り五冠を達成した。前人未到の八冠もいよいよ視野に入ってきた。周囲の応援はさらにもりあがるが、本人の勝利コメントは、極めてクールかつ謙虚でとても十代の対応とは思えない。
だいぶ前に、本屋で雑誌コーナーにいたら隣にいた中年男性が、藤井聡太の写真が表紙のムックを指差し「ちょっと勝ったからって、こいつこんな本なんか出しやがって、調子に乗ってるよな。」と悪たれをついていた。藤井聡太の写真を載せたら売れるからであり、努力してタイトルを取った藤井聡太に何の落ち度があるというのか。有名になるということは、本人が全く知らない人達に、自分のことをあーでも無いこーでも無いと言及されることに他ならない。無責任な悪意ある中傷が、最近はSNSなどで一気に拡散するからたちが悪い。以前、女子プロレスラーの子が自殺したのはまだ記憶に新しい。藤井聡太のコメントは、いつもよく考えた大人対応だが、将棋に集中するためには最善手だろう。藤井ブームは続くだろうが、有名になればなるほど、アンチの人が生まれ落とし穴がそこら中に掘られる。藤井聡太は、そんなことは既に読み切っているのだろうか。


亀虫擲つ闇の深さかな


高浜虚子の句。