虚子探訪(19) 遠山に日の当りたる

【虚子探訪(19)】

 

「遠山に日の当りたる枯野かな」

 

明治33年11月25日。虚子庵例会。遠くに見える日の当たっている山と、足元に広がる枯野の対比。どこにでもあるような冬景色に、静謐な時間が流れていく。遠山にさすひかりは希望を象徴しており、中7「当りたる」で切れ、やがて枯野へと及ぶことを予感させる。虚子は自解で「遠山の端に日の当つてをる静かな景色、それは私の望む人世である。」と述べている。虚子26歳の作品、初期の代表句。

 

「美しき人や蚕飼の玉襷(たまだすき)」

 

明治34年。美しい女性が、襷(たすき)をして蚕の世話をしている様子を句にした。「玉襷」はたすきの美称。相当の美人だったに違いない。