虚子探訪(55) 仲秋
【虚子探訪(55)】
「仲秋の其一峰は愛宕かな」
仲秋の題詠。「仲秋」は秋を三期に分けた中期。陰暦八月をいう。仲秋の行楽地に適した最も良き山は愛宕山であるとの句意。
「仲秋や院宣をまつ湖のほとり」
「院宣」は上皇または法皇の宣旨をいう。仲秋に院宣を待って湖畔に滞在しているとの句。歴史を題材に句作したもの。具象性は乏しく、歴史に対する基礎的な土台が変わっていく中では、なかなか作者と意識を共通させて鑑賞することは次第に難しくなってくる。
「仲秋をつつむ一句の主(あるじ)かな」
仲秋を包含する一俳句の作者であります、との句意。秋は古来数多の詩歌に詠まれてきた。自分もまたその列に加わり、仲秋の素晴らしい一句を渇望する者であるという作者の意気込みが感じられる。
明治41年8月22日。日盛会。第20回。