虚子探訪(56) 去来

【虚子探訪(56)】

 

「凡そ天下に去来程の小さき墓に参りけり」

 

向井去来は蕉門十哲の一人。俳諧西の奉行と呼ばれ、『去来抄』などを残し虚子も尊敬していた。去来の墓は京都嵯峨野の落柿舎の北側にあり、去来と二文字のみが書かれた小さな墓石である。去来ほど偉大な人はいないという思いと、なんと小さな墓であることかという驚きが合体したような句で、とんでもない破調の二十五文字の詠嘆となっている。

 

「由公(よしこう)の墓に参るや伴連れて」

 

由公(よしこう)と呼んでいた友人の墓参りをした、同伴者を引き連れての句意。正直この句を残した意図がよく解らない。由公という呼び方、伴連れての表現、幼少からの友人にしては親近感や友情は乏しい感じがするのだが。

 

「此墓に系図はじまるや拝みけり」

 

この墓より家系図が始まっているのかと思うと感慨深く、手を合わせて拝んだことだの句意。

お盆の墓参りで祖先の墓に敬虔な思いを抱いたのである。中8字余りで調子も悪く、内容も凡庸と思うがどうだろう。

 

明治41年8月23日。日盛会。第21回。