共感ということ

穂村弘『短歌という爆弾』より。

いずれも短歌の初心者の作品である。それぞれ自分の体験や気持ちに素直に作ったことがわかる作品だが、それにもかかわらずこれらの歌には読者を感動させる力が弱い。読者より先にまず歌の作者が自分で自分に共感してしまっているために、他人と共有できる感動を生み出すには至っていないのである。他人に共感するのに比べて、自分で自分の気持ちに共感することはたやすい。この容易さは自分自身の本当の心に向かって言葉を研ぎ澄ますということから限りなく遠いところにある。作者は定型に言葉を組み立てただけで満足してしまい、そのために、結果的に生み出された作品はめざしたはずの共感からも遠ざかることになる。

穂村弘の意見に同意するとともに、自戒としたい。