斎藤茂吉『赤光』

斎藤茂吉『赤光』を読了。1913年初版だから、100年以上前の歌集だが、今なおその歌は迫り来る力を持つ。「死にたまふ母」の挽歌を超える作品は出てこない。
歌集タイトルの『赤光』は聞き慣れない言葉だが、赤い光という意味お経の一語である。斎藤茂吉にとって赤こそが、歌を詠む起爆剤だった。歌集に赤、紅の言葉が頻繁に使われている。また、夕焼け、炎、血など赤い事象も好んで取り上げられる。全体を覆う抑圧感がベースにあるなか、茂吉の心情が血が吹き出るように爆発する。勤務する精神病院の患者の死、母の死、師の死。生死の只中を弧心を抱いて彷徨する歌人の歌は、充分に衝撃的であったろうと思う。


のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にいて足乳ねの母は死にたまふなり