句集『稲津』(40)爪

【句集『稲津』(40)】

骨届く足の冷たさ冬ざるる


まだ未明、電車に乗って会社に向かう。足が冷たく、骨まで届くかのようだ。骨身にしみるという言葉ができたのがわかる。電車の暖房が効くのはしばらくかかる。


爪切るは生きてゐること年用意


生きていればこそ爪ものびてくる。背が伸びるのは十代で終わったが、爪は何歳でものびる。ただ成長と呼ばれないだけ。身体をきれいにして年を越す。