宇佐見りん『かか』

ジュンク堂に宇佐見りんの『かか』『推し、燃ゆ』の2冊が平積みされていて足が止まった。『かか』が三島由紀夫賞文藝賞を受賞、『推し、燃ゆ』は芥川賞を受賞、帯には21歳とある。どんな作品なのだろうと、久しぶりに小説を買い読み出す。とりあえず『かか』を読了したが、正体のわからない蠢くものを見てしまった、別の言い方をすれば傷口から中の肉を見ている感じとでも言おうか。主人公うーちゃんの語り口は神奈川弁なのだろうか、子供っぽいしゃべり方で限界状況が語られていく。この文体でないと表現しにくい幼児が見ているような愛憎が渦巻く原形質な風景が広がる。賞を総ナメしたにふさわしい新たな才能であることは間違いない。『推し、燃ゆ』へと進んでみよう。


一枚の寒の鏡とたましひと


藤田湘子の句。