エッセイスト岸本葉子の初句集『つちふる』(角川書店)が上梓された。岸本葉子の俳句本は何冊も読んだが、句集が無かったのが不思議なくらい。還暦を契機として句集をまとめたというのが、自分と同じなので、俳句の腕前はさておき、強い親近感を覚える。俳句を始めて約12年間の349句が収録されている。都会の女性が詠んだ端正な俳句が並ぶ。
句集を読んでいると、作者の生活やら人生が伝わってくる。面識もない人たちと十七音を媒介として会話するのが私は好きだ。
梅林を日あたる方へ歩きけり
大文字果ててこの世の人いきれ
去年今年闇の厚きは川の上
句集『つちふる』より3句。