虚子探訪(16) 蓑虫

【虚子探訪(16)】

 

「五月雨や魚とる人の流るべう」

 

明治32年。「べう」は助動詞「べし」の連用形。五月雨となり魚捕りをしている人が流されてしまいそうだという句意。

 

「蓑虫の父よと鳴きて母もなし」

 

明治32年9月10日。根岸庵例会。『枕草紙』(第40段)が、蓑虫は鬼の子で自分を捨てた父を呼び、「ちちよ、ちちよと、はかなげに鳴く、いみじうあはれなり」と書いていることをを踏まえた句。虚子は母もいないと指摘をして蓑虫の哀切さを増した機知の句。