虚子探訪(15) 亀鳴く

【虚子探訪(15)】

 

「亀鳴くや皆愚かなる村のもの」

 

明治32年。「亀鳴く」は春の季語。実際には亀は鳴かずケラの声とされる。「皆愚かなる村のもの」は、田舎の保守性に対する、理想主義的な虚子の苛立ちなのかもしれない。虚子25歳、まだまだ意気盛んな若い時代の作品である。

 

「薔薇呉れて聖書かしたる女かな」

 

明治32年。この句だけでは状況不明だが、とある女性に虚子はバラの花をもらい、聖書を貸したのである。薔薇と聖書からすると、相手の女性はモダンな女性と推測される。