虚子探訪(57) 上京

【虚子探訪(57)】

 

「螽(いなご)とぶ音杼に似て低きかな」

 

明治41年8月25日。日盛会。第23回。

「杼」は「をさ」と呼ばれ、機織りで横糸を通す道具のこと。「イナゴの飛ぶ音が、機織り道具の杼に似ていて、杼よりも低い音だなあ。」という句意。螽も織機も見かけなくなった今日、実感として解らなくなっている。

 

「芋を掘る手をそのままに上京す」

 

明治41年8月27日。日盛会。第25回。

芋掘をしていた手も洗わずにそのまま上京した。あわてて上京せざるをえない緊急事態を、誇張した表現で句にしたもの。状況不明で、句自体にも発見も面白さも乏しいと感じる。