句集『稲津』(70)ハミング

【句集『稲津』(70)】

大寒や波打ち寄せる枯木灘


この句は枯木灘という言葉を使いたかったということにつきる。『枯木灘』は中上健次の小説のタイトル。枯木灘は冬の季語こそ相応しい。


寒の明けハミングをして床屋出る


散髪の爽快感はすてがたいものがある。身軽になったようでハミングしながら床屋の扉を開けて出て行く。さあこれから何をしよう、気分は高揚している。

句集『稲津』(69)シクラメン

【句集『稲津』(69)】

「黄落」2016年の俳句に入ります。


初春や遠き光の届きたる


光の源は宇宙の遥か彼方の遠い場所。今年もまた新しい年が明けた。光の贈り物が地球に届いたからこそ。滞りなき天体の運行は恩寵という言葉が相応しい。


シクラメン窓際に光集めて


年末にシクラメンの鉢を買い求め、窓際に据えて眺め暮らすことが恒例となっている。シクラメンがあることで、光が集まってくる気がする。小椋佳の「シクラメンのかほり」か懐かしい。

田中邦衛逝く

3月24日に俳優の田中邦衛が亡くなったとのニュースが流れる。田中邦衛と言えば加山雄三若大将シリーズや「北の国から」「学校」などに出演し、存在感のある役者だった。出身は隣市である土岐市土岐津町。高校は我が家のすぐ上にある麗澤瑞浪高校。なのですごく親近感を覚えていた。80歳過ぎからは姿を見なくなっていたが、老衰で亡くなったとのこと。88歳、素晴らしい俳優さんだった。ご冥福をお祈りします。


再びは生れ来ぬ世か冬銀河


細見綾子の句。

句集『稲津』(68)未来

【句集『稲津』(68)】

濃き眉のままに逝きけり年の暮


その人は、太くて黒々した眉毛をしていた。体調を崩して休んでいたが、亡くなったとの報せ。年末の慌ただしい中の訃報、
突然に人はいなくなる。


年新た押し寄せてくる未来かな


晦日、新年がやってくる。未来は海岸に打ち寄せる波のようだ。この俳句を詠んだ年は、環境が大きく変わり怒濤のような日々が続いた。

新年度 2021

4月が始まった。新年度である。と言っても、学校でも役所でもないので余り関係ない。入社式はあるが、私は無関係。
朝から頭痛、肩凝り?風邪?とにかく出社、あれっ、携帯を忘れた。フルに働いて家に帰る。友達が団子屋を開店した。土曜日に買いに行こう。
なんか、お疲れ気味の私です。


万愚節月月火水木金金

句集『稲津』(67)薬喰

【句集『稲津』(67)】

囲炉裏火の熱きを囲み薬喰


毎年、囲炉裏のある料理屋に集まり猪鍋を食べる。囲炉裏の炭火が赤々と燃えて、自在鍵に吊るされた鍋からよそって食べる。美味いものを仲間と食べる幸福。


冬波の背丈をこえて上がりけり


福井県の三国に蟹を食べに行った時、日本海は荒れていて、波は人の背丈以上の高さがあった。人を呑み込むほどの波には、脅威の感情が湧く。