虚子探訪(59) 法の城

【虚子探訪(59)】

大正時代の俳句の鑑賞にはいります。

 

「三世の仏皆座にあれば寒からず」

 

「三世」とは仏教用語で、前世・現世・後世をいう。仏様が鎮座しておられるので、寒いとは感じないよ、という句意。達観したような、精神の安定を求めたような句。

 

霜降れば霜を楯とす法(のり)の城」

 

大正2年。虚子38歳。寺<冬>の題で作られた句。俗世間を離れた寺院の厳しい世界を「俗世の衆生を済度する為に法輪を転ずる所、祖師の法燈を護するところ。」として「法の城」と詠んだ。自分の現在の厳しい境遇に対する思いとオーバーラップしその感慨が句となった。「法の城」は「ホトトギス」と同一視して解釈できるのである。