虚子探訪(76) 濡縁

【虚子探訪(76)】

 

「濡縁(ぬれえん)に雨の後なる一葉かな」

 

大正3年。雨が降った後の濡れた縁側に一枚の葉が落ちていた。雨風に運ばれてやってきたのだろう。激しく降った雨を思い、ただいま現在の静かな時間を感じる句。

 

「葡萄の種吐き出して事を決しけり」

 

決めなければならないことがある。考えに考え結論は出た、葡萄の種をぷっと吹き出し決定した。

 

「蜻蛉(とんぼう)は亡くなり終んぬ鶏頭花」

 

大正3年10月18日。発行所例会。見渡せばトンボはいなくなり、鶏頭の花も終わりである。いよいよ秋は深まっていく。