黒田杏子『木の椅子』

コールサック社から出た黒田杏子の第一句集の増補新装版『木の椅子』を読了する。句集が再度発売されることなど、まずない。なぜなら句集は売れないのである。『木の椅子』は、平成2年に新装版で牧羊社から出され、今回3回目の出版である。句集の質の高さ、作者の人気の高さがなければ、こんなことはありえない。今回の出版は、黒田杏子が現代俳句大賞を受賞したからだろうが、彼女の俳句に全身全霊で打ち込み、多角的な活動があってこそだろう。第一句集には作者の全てが出ている。黒田杏子のその後の展開がうかがえる、気持ちのいい句集である。


磨崖佛おほむらさきを放ちけり


『木の椅子』より。